劇評

2011年11月

F/Tで上演された各作品、企画についての劇評アーカイブです。
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反スペクタクルに踊ろう/踊らなかったりしよう−『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』評

夏目深雪

 『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』は、誰もが知っているポップスが流れるなか、その曲のテーマに関わるものを公募で集まったダンサーたちが、時にはダンス以外の方法を用いて表現する演目である。ベルに対する知識がない人がそれだけを聞くと、アメリカナイズされたミュージカルチックなダンス、ダンサーたちがノッて踊りまくり、最後は大円団の大喝采というものを想像してしまうかもしれない。或いはベル、コンテンポラリー・ダンスに対する知見が多少なりともある人なら、難解で抽象的なダンスを観客たちがじっと鑑賞する場を想像するのかもしれない。だが、演目を実際に見て私が連想したのは、他のダンサーや過去の演劇ではなく、やはりベル自身影響を隠さないロラン・バルトであった。
 ベルの過去の作品はバルトの理論のダンスによる実践のようなものがいくつかある。1995年の『ジェローム・ベル』はダンサーは裸、照明や音楽も極力排除という、バルトの「零度のエクリチュール」の実践版とでも言えるべきものであった。1997年の『シャートロジー』ではバルトの試論「衣服の歴史と社会学」から着想を得て、パフォーマーが幾重にも重ね着しているTシャツを脱いでいくなど、「衣服」をテーマにしている。(※1)ではこの『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』はどのように、バルトの理論を実践しているのだろうか。

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叙情性と論理性の狭間で

百田知弘

全体的な構成の妙や、印象に残る情景描写などは楽しめた半面、さらに掘り下げられるはず(あるいは、掘り下げるべき)ところを詰め切れていないもどかしさを感じさせる公演だった。

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