「私について描いた最高の映画」(クリストフ・シュリンゲンジーフ)
ウイーン歌劇場の真っ正面に設置されたコンテナハウス。
屋根に巨大なバナーが付いている:「外国人よ、出ていけ!」。
コンテナの中に12人の亡命希望者が滞在している。通りすがりの人々が、コンテナの奥が見える小窓から彼らの生活を監視する。
この一週間にわたって続くインスタレーションで「観客」は毎日、外国人を一人選ぶ。選ばれた人がその直後に国外追放される。最後まで残る亡命希望者一人だけがトップ賞をもらうことができる。それは、オーストリアへの滞在許可だ。
観客を常に対立させた映画・演劇作家クリストフ・シュリンゲンジーフ(1960~2010)によるこのインスタレーションはオーストリア国内のみならず、世界中のメディアで激しい議論を巻き起こし、日増しにシュリンゲンジーフのコンテナ前に集まる人々の数は増加していった。
訪れた何千人ものウイーン市民のなかで、戦争のベテランが粗野なスピーチをしたり、アフリカの移民が自分のオーストリアでの居住権を主張したり、年寄り女性がシュリンゲンジーフを肉体的に攻撃しはじめるのだった。
ウィーンが燃えていた。
最右翼の党FPÖが連立政権に加わったことで全体的に右翼に偏ったオーストリアの国民は、シュリンゲンジーフがこの挑発的な作品を通じた呼びかけにより、国内の政治的または精神的情勢を痛感させられた。
この『外国人よ、出ていけ!』でシュリンゲンジーフは21世紀においての「政治的演劇」の可能性について一つの注目すべき前例を作り上げた。
彼は先入見を避け、矛盾を抑えず、人々の奥深くに隠れていたものが表面化するような環境の創作に成功したのだ。
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当日はこの作品を、「ポストドラマ演劇」の著者として知られる、ドイツ語圏の最重要演劇理論家/批評家であるレーマン教授が解説します!
F/T テアトロテーク/プログラム2:『外国人よ、出ていけ!』
クリストフ・シュリンゲンジーフ/パウル・ポエット
ドイツ/2002年/カラー/90分/ドイツ語、日本語字幕付き
日時:11月1日(火)19:00
会場:東京ドイツ文化会館ホール
解説:ハンス=ティース・レーマン