桜美林大学 総合文化学群演劇コース
京都造形芸術大学 映像・舞台芸術学科
近畿大学 文芸学部芸術学科舞台芸術専攻
東京藝術大学 音楽学部音楽環境創造科
日本大学 芸術学部演劇学科
立教大学 現代心理学部映像身体学科
社会に開かれたものとしての演劇を、実技と理論を通して広く学び、地域の芸術文化に貢献できる人材を育成する。俳優教育はもちろんのこと、戯曲、演出から、舞台美術、照明、音響等のスタッフワーク、企画・制作やアートマネジメントに至るまで、“演劇の力”を構成する要素を多角的、実践的に学ぶ。また理論面においても、歌舞伎から新劇までの近代劇、アングラから始まる日本現代演劇、ギリシア悲劇、シェイクスピア、イプセン、チエホフ、ベケットなど海外演劇の歴史と概要を幅広く網羅する。また、コンテンポラリーを中心としたダンスに力を入れていることも大きな特徴である。英語劇のクラスもあり、短期間の海外研修、海外演劇学校への留学も計画されている。専任教員は演出家、劇作家、プロデューサー、技術スタッフ、舞踊家、ネイティブ英語劇指導者、演劇学研究者で構成され、それ以外にも演劇・ダンス界の第一線の講師による講義が行われる。
桜美林大学の演劇コースにおいて最大の特徴は年5回行われるOPAP(桜美林大学パフォーミングアーツプログラム)という公演形態である。さまざまな授業の集大成として、より専門的に舞台を作ることでスタッフからキャストまで演劇の全てについて経験できるものである。演出家、振付家はプロ、他は全て学生。ただしキャストは全てオーディション。一般観客の鑑賞に堪える、高いレベルの上演を目指し、毎公演、学生は試行錯誤を繰り返す。スタッフであれ、キャストであれ、プロの演劇人を目指す学生にとっては厳しくも豊かな実践の場であり、そうでない学生にとっても演劇の素晴しさや可能性を体感でき、その後の進路を考える上でも重要な場となっている。今回は圧倒的なことばで構成された戯曲世界を学生自身のことばとして成立させることを主眼とし、結果生まれた世界が多様化すべく、はばたくことを目指している。
2000年の「映像・舞台芸術学科」(学科長:太田省吾)の設立により本格的な舞台教育がスタート。現在、それを発展的に継承すべく2007年に誕生した「舞台芸術学科」へ移行中(3,4回生が前者に、1,2回生が後者に所属)。学内の本格的な劇場施設である「京都芸術劇場」を拠点とし、個々の学生が、演劇、ダンス、伝統演劇の実技からスタッフワークまで、舞台芸術全般を総合的に学ぶ過程を通じて、現代の舞台創造に必要な自主性、コミュニケーション能力の育成を目標とする。現学科長の川村毅のもと、第一線で活躍するアーティストや批評家・研究者が、多様な方向性をもった学生を指導している。
映像・舞台芸術学科3回生を中心に履修する「舞台芸術ⅧB」では、教員の提出するコンセプトや振付を発端とし、ダンスの経験のある学生も、全くない学生もともに自らの身体と向かい合いダンスの可能性を探っている。まず、自分の、そして他者のからだを見つめることから始まり、即興のダンスや振り付けのショートピースを作ることなどを重ねながら、作品を生み出すことに向かいあう。私達が現に生きつつある「現在」を引き受けることができるような身体表現としてのコンテンポラリーダンスの形を模索していく授業である。
専門家の養成を目的としながらも、幅広い意味での「演劇人」を育てることを目指し、3つの<系>を設置。<演技・創作系>第一戦で活躍する教員の指導のもと、実習を中心としたカリキュラムで、演技・舞踊・演出・振付・戯曲創作・スタッフワークを学ぶ。<ドラマコミュニケーション系>演劇や舞踊を通じ、教育や社会に貢献できる人材を育成。舞台芸術関連科目の他に、アートセラピー、地域演劇研究なども学習。<TOP(Theater Organization Planning)系>舞台芸術に対して提言・発言できる人材育成のために少人数のゼミ形式による授業を実施。劇場や公演の制作、演劇祭の運営等の研修活動にも参加する。
2004年度に卒業公演として『唐版 風の又三郎』(演出:松本修)を上演。05年度、唐十郎が客員教授として赴任し「唐十郎特別講義」(コーディネイター:西堂行人教授)が開講し、それにシンクロする形で松本准教授担当の実習クラスで『ジョン・シルバー』、06年度には『少女都市からの呼び声』が上演された。07年度、1年生〜卒業生の学年横断的な参加による「唐十郎演劇塾」を設け、同年度に『動物園が消える日』、08年度は『少女仮面』を上演。「唐十郎演劇塾」は唐教授、西堂教授、松本准教授の指導を受けつつ、学生中心に稽古場の作業が進められている。
この学科は、特に固定した芸術分野に焦点を当てるのではなく、いろいろな可能性をさぐりながら、多様な傾向なアート(アーティスト)がコラボレーションし、相互作用により、シナジー効果を生み出すことに期待していると考えられます。ほとんどの学生は、幼少より音楽的教育を受け、早くよりアートに触れつづけた体験を持ちます。そのような素養の上に音楽以外の他分野の知識や実践を付け加えることでこれまでにない可能性の開花を狙っています。この学科には作曲、音響、カルチュラルスタディーズ、文化政策・マネジメント、映像、演劇、ダンスなどの分野があり、それぞれが交流しながら学生の多面的な可能性に制限を加えることなく、同時に専門性の獲得もめざすはなはだ傲慢とも言える目標があります。また、この学科内にある「プロジェクト4」と呼ばれる一種ゼミ形式の実践授業は、特に身体芸術(演劇とダンス)に関心を持つ学生の集まりです。
プロジェクト4という授業の基本的な狙いは、ものを創るとはどういうことなのか、を学習することにあります。入学したてのころの学生は実にいとも簡単にものを創ってしまいます。そのような姿勢を直すことに多くの時間が必要となります。だから、ほとんど技術を教えることはありません。当初は、脚本の読み込みにほとんどの時間を費やすことになります。役者希望の学生であっても、本の読み込みと演出の方法に集中して取り組むことになります。残念ながら、高校時代には「ものを考え続ける」ということを学習し、習慣化されることはほとんどありません。本の単語ひとつひとつを読み込んでいくという作業を体験することもまずありません。プロジェクト4の演劇の授業でやりつづけているのはそのような単純で苦労の多い作業です。役者としての技能をどうすれば磨けるのかという課題は積み残したまま、創作に入っていくところに大きな限界とチャレンジがあります。
執筆:市村作知雄(東京藝術大学准教授)
演劇をめぐる知と技術の対峙を創造的に止揚し、あたらしい演劇の知(ないし演劇)をつくることが教育の基本である。理論と実践を両立させるのは容易ではないが、両者をただ並べて教育するのではなく、批判的に統合していくところに意味を見出しているのだ。現在、演劇学科には8つのコース(劇作・演出・演技・装置・照明・日舞・洋舞・企画制作)があり、それぞれのコースを中心に、1年次から、理論教育にとどまらず、実践教育を行っている。コース制度は、演劇の学びを志す高校生たちに具体的な指針を与え、かつ、在学中の専門に対する意識を高めるために設定されたものだが、わが国の中等教育における演劇知の不在を考えた場合、よりジェネラルな基礎教育の必要性が求められることも意識して、1年次においては、コースを越えた総合的な実習の場も設けて、演劇学的共通規範(ディシプリン)の獲得も視野に入れている。2年以降は累進的な専門教育が実施され、専門的リーダーシップないし起業家精神の涵養が目指される。
1・2年生ではコースを中心に演劇及びそれぞれの専門パートにおける〈目的性〉と〈技術性〉を模索していく。2年生からはコースが総合的に合体して行われる「舞台総合実習」という授業がある。これは学生たちが指導者を中心として、自ら希望するパートを、実際の舞台制作(演劇・日舞・洋舞)の中で遂行するもので、この場でのさまざまな課題を日常の学びにフィードバックすることによって、彼らのモチベーションは、より深まっていく。また、舞台総合実習は〈集団性〉を学ぶ、つまり、集団の中における個の役割とその発揮方法を経験していく場でもある。一方で、演劇文化についての基礎的な理解を深めつつ、福祉・教育・企画・制作などの応用領域において実践的な研究を重ね、新しいかたちのシアターワーク、演劇を通じたカルチュラルワークを開発することにも力を注ぎ、日常授業のほか、ワークショップなども多数設定されている。
映像と身体をたがいに密接にかかわるものとして追求することが、この学科の出発点である。映画、演劇、ダンスなどの学習・創作を、重要な課題として視野にいれているが、それよりも前に、映像が人間に何をもたらし、どんな作用を及ぼしているか、また身体としての人間が、この世界でどのように存在し、どういう問題に直面しているか考えることを基本的方向とする。
映像は私たちの知覚に浸透し、生きた身体をたえず拡張する。映像を受けとる身体は、身体そのものを様々な方向に変化させている。一見すると固定し安定しているように見える身体は、たえず様々な力、刺激、兆候を受けとって、みずからを変化させている。映画、演劇、ダンスのような芸術を、まずそのようにたえず振動する相互作用の場に開いて考えることで、芸術表現のモチーフそのものを再発見することができないだろうか。
学生には、映像と身体をめぐり、学際的、思想的、芸術的、歴史的、社会的等々の観点から思考することと、既製のジャンルや形式にとらわれずに、それぞれのモチーフを見つめることから表現を作り出すことを要求する。
身体表現に関しては、初年度から、演劇・ダンスのワークショップを、ほぼ段階をふみつつ実践することができる。
すぐに表現や創作に向かって急ぐのではなく、比較的シンプルな所作を注意深く実行しながら、表現する自己、他者、身体、それらが存在し関係する場を繊細に知覚し、時間をかけて、表現の場、素材、モチーフを構築していくことを重視する。
初年度の〈身体学概説〉から始まり、身体をめぐる理論的授業では、広く多様な文脈で身体を考察しながら、現代の演劇やダンスの重要な作品に出会うことになる。その延長上で演劇・ダンスの歴史や批評をあつかう専門的講義や演習に参加することができる。卒業論文を執筆する以外に、卒業制作をおこなう道が開かれており、そのため4年次には、卒業制作をめざして緊密な指導を受けられる演劇・ダンスのワークショップを設定している。
映像表現と身体表現の学習を切り離せないものとして本質的に共存させ、また創作・表現と理論・批評をあくまで一体として設計していることは、学科のカリキュラムの著しい特徴といえる。