F/T09秋では、自身の代表作でもある『花は流れて時は固まる』を大幅なリ・クリエーションのもとに上演し、絶賛を浴びた黒田育世。研ぎ澄まされた身体感覚を武器に、ダンサーと自らの身体を極限まで追い詰める過激でダイナミックな振付は、ダンスがもつ本来的な衝動と結びつき、世代や性別を超えて多くのファンを持つ。
「お母さん」をテーマとする本作ではBATIKのダンサーのほか男性パフォーマーも起用。母親について深く考えていくと宇宙にたどりつく、という黒田の思考がテキストも交えて舞台に構築される。母との出会い、母から産まれた存在である自己との対峙......今までも、そしてこれからも続いてゆくであろう関係とその奇跡を見つめるまなざしの向こうに、壮大なファンタジーが立ち現れる。
創作ノート
黒田育世
ずっとお母さんのことを考えていたら、宇宙のことを想像するようになり、感情的に傾きがちだった考え方が少し解放されて、発見する感覚が強くあったので、これを作品にする決意が出来ました。
考えが、お母さんへ戻って、宇宙にまた行って、としつこく繰り返すうちに、その往復の運動の内容は、間違っているかもしれないのに、整然としたものになりました。
お母さんと宇宙の間に運動が描いた人型があって、これは、その人型にその人型の先祖と子孫が吹き込んだファンタジーです。