フェスティバル/トーキョー トーキョー発、舞台芸術の祭典
宗教学者の中沢新一氏は、その著書『アースダイバー』のなかで「東京の中心は何か」という問いを立てている。中沢氏によると江戸時代には江戸の中心は、遠くからこの都市を見つめる富士山であり、この山は「死と復活の神秘力」を持つものとして人々から仰ぎ見られていたという。
いまの東京にそのような「死」の視線が存在しているのだろうか、と問いを進める中沢氏が注目したのが東京タワーであった。
朝鮮戦争に用いられ、壊れて使用不能になった米軍戦車。その廃物の鉄くずからつくられた東京タワーは、中沢氏によると、「死の領域にさしこまれたセンサー」であり、「生と死を、過去を生きた死者の魂といまだ産まれていない未来の生命とをつなぎながら、不確定な空間の中を揺れ動いている」という。
我々は、上記の中沢氏による東京タワーに関する記述を出発点に、演劇創作を行う。演劇を「鎮魂と予祝の芸能」であると規定する我々にとって、とても刺激的で心踊る記述なのである。
また、「東京タワー」という題材に向き合うには、愚直にすぎるかも知れないが、東京タワーが見渡せ借景となる上演場所が適切であろうと考え、東京タワー近辺での野外上演を行うことにした。
東京タワーという風景を扱うことで、いま東京で生きている我々の様々な思いが交錯し、乱反射するような、力強い演劇を立ち上げることを目指している。