ホーム / F/T12 公募プログラム / 美しい星 / 本プログラムについて
三島の問いから考える、世界の終わり、核と人間の未来

美しい星

ピーチャム・カンパニー [日本]

構成・演出:川口典成
11月12日(月)〜 11月20日(火) The 8th Gallery (CLASKA 8F)

本プログラムについて

創作ノート

『美しい星』に描かれている或る家族は、地球とは別の天体から飛来した宇宙人であるという意識に目覚め、核兵器・原子力を手にしたことで人類が破局する危機に直面する地球を救おうと立ち上がります。 この作品の眼目は、宇宙人という外部的な存在(alien)を設定することで、人間・地球という存在を俯瞰的視野から考察・描写することを可能としたことにあるのですが、しかしながら、この作品の魅力はまた別の点にあります。
三島由紀夫は、宇宙人であるという意識に目覚めた彼らが持つ「人間の肉体」を執拗に描くのです。つまり、この小説のナラティヴは、宇宙人という意識を持ちながら人間の肉体を持っているという矛盾を含んだものとしてあります。
このナラティヴは、小説から演劇への移植の過程で、舞台上での役柄への漸近(ぜんきん)(宇宙人になろうとすること)と役者個人の肉体の桎梏(しっこく)(ぬぐいがたく人間であること)という演劇本来の「二重のナラティヴ」と接触し、小説で試みられた語りの戦略を、より直接的に露呈することになるのです。1ミリも肉体の外へは出ることができないという限界を持った人間が、「人類」や「世界」 といったことをどのように思考・志向することができるのか。この演劇は、いま現在われわれが置かれている状況を思考・感受する方法を問い直し、探究し創造する演劇なのです。

川口典成