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世界に衝撃を与えた無言劇、「行き止まり」の日常。

夢の城 - Castle of Dreams

ポツドール

作・演出:三浦大輔 [ 日本 ]
11月15日(木)~ 11月25日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト

本プログラムについて

ドイツ、ベルギーなどヨーロッパ各地に衝撃と賞賛をもたらしたポツドール『夢の城』。
6年ぶりの東京凱旋公演が、F/Tで実現!

思わず目を背けたくなるような人間の「業」を濃縮し、作品に昇華させてきた三浦大輔率いるポツドール。その特徴は、視線や身じろぎといった非言語コミュニケーションによって浮き彫りになる感情や状況を重要視し、ハイパーリアルな世界を創り上げるものだ。その極地とも言えるのが、06年3月、主宰の三浦大輔が『愛の渦』で第50回岸田戯曲賞を受賞した直後に発表され、センセーショナルを巻き起こした『夢の城』。無気力で動物化した若者の姿を描いた無言劇は、観る者に大きな衝撃を与えた。ヨーロッパ各地での公演を経て、6年ぶりの東京凱旋公演がついにF/Tで実現する!

言葉以上に饒舌に語りかけてくる、「空気」

「僕は劇作家でありながら、言葉をまったく信用していない」と三浦が語るように、ポツドールの作品では、俳優のセリフを聞かせることよりも、その場で起きていることや空気を観客と共有することに重きが置かれている。それは、日常生活の中でさえ、ほとんどの人が言葉で会話をしているのではなく、空気を読んで会話をしている現代社会において、劇作家も言葉の裏にある「空気」を書くべきであり、「状況で見せるのが演劇の一番面白いところ」という考えに基づいたものだ。観客は、計算しつくされた俳優の動きを追いかけることで、台詞から理解する以上に、その「場」に居合わせているような感覚に陥り、作品の深層部にまで到達することができるのだ。

目的のない状況の中で浮かび上がる「人間らしさ」

アパートの一室で共同生活を送る8人の男女。ふとん、洋服、食べ物、雑誌、ゴミが床に散乱し、足の踏み場のない雑然とした空間で、会話もないままに、寝て、起きて、食事をし、相手構わず殴り合い、セックスをする。本能の赴くままに行動する彼らの姿を眺めることは、もはや人間の暮らしを覗き見るというよりも動物の生態観察に近い。互いに言葉を交わすこともなく、欲望に飲み込まれた人間の成れの果ての姿。しかしそれは、「真っ当な価値観」を持った人々の生活の中にも見られる―他者を排除し、閉じられたコミュニティの中で自分本位に振る舞う―のではないだろうか。 初演から6年が経過し、リアリティを持って感じられる事柄が大きく変わった社会において、この壁に囲まれたユートピアは観客の目にどのように映るのか。


創作ノート


去年、一昨年と、『夢の城』は海外で上演されました。今回、その海外バージョンを日本の皆様にも観ていただこうと思っています。
この作品をこのタイミングで上演しようと思った理由はシンプルです。役者達が年をとってきて、いわゆる「若者達」に見えなくなってきているからです。まだギリギリそう見えるうちに、どうしても、日本でもう一度、上演したかったのです。
初演の『夢の城』は、とても賛否が分かれました。その理由の一つに、「台詞が一言もない」ということが少なからず影響していると思うのですが。正直、「無言劇」とか、そんなことはどうでもいいのです。それが目新しいものでないことくらいわかっています。観てほしいのは、その方法を使って辿り着いた、着地点です。
この作品を「エログロ」と言い放つのは簡単です。ただ、それだけでは済まされない「捨てがたさ」が、この作品にはあるのです。その正体は、一体、何なのか。今回の上演ではっきりさせようと思っています。過信だったらごめんなさい。どうぞ。よろしく。
ポツドール主宰 三浦大輔