シンポジウム
フェスティバル/トーキョー(F/T)、国際演劇評論家協会(AICT/IATC)日本センター、早稲田大学文学部演劇映像コース共催によるこのシンポジウムは、今日の国際演劇祭の意義と意味作用の可能性を探る。
F/Tからはディレクター・市村作知雄が参加し、ほか四人のパネリストはすべてAICT/IATC会員である。キム・ユンチョル氏(韓国)はAICT/IATCの前会長であり、その期間世界の演劇祭に幾度も審査員として携わってきた。オクタヴィアン・サイウ氏(ルーマニア)は、教育・発表・組織運営活動で世界各国をひっきりなしに飛び回っている。氏はまた、自国のルーマニア(シビウ、クライオーヴァなど)のみならず他のヨーロッパ地域(特にイギリス・エディンバラ)の国際演劇祭にもたずさわってきた。藤井慎太郎氏(日本、早稲田大学教授)は、演劇評論家として、アヴィニヨン(フランス)をはじめとする国際フェスティバルに精通している。司会は野田学(明治大学教授・演劇評論家)がつとめる。
日程 | 10/9(月・祝) 14:00-17:00 途中入退場自由 |
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会場 | 早稲田大学戸山(文学部)キャンパス 33号館3階第1会議室 |
入場料 | 無料(予約優先) |
登壇者 | ユンチョル・キム(韓国国立劇団芸術監督、AICT/IATC前会長)、 オクタヴィアン・サイウ(演劇評論家、AICT/IATC副事務総長・ルーマニア支部会長)、 藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院教授、AICT/IATC日本センター会員)、 野田 学 (明治大学教授、AICT/IATC日本センター会員、『シアターアーツ』編集部)、 市村作知雄(F/T ディレクター) |
英語 | 英語(日本語逐次通訳付き) |
主催 | フェスティバル/トーキョー、国際演劇評論家協会(AICT/IATC)日本センター、早稲田大学文学部演劇映像コース |
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メッセージ
インターナショナルをナショナルにするのか、ナショナルをインターナショナルにするのか?2020年のオリンピック/パラリンピックに向けて、それと関連する文化プログラムをどうするか。おそらく東京はその文化的「クール」を日本の伝統と「おもてなし」の精神に結びつけて提示しようと色々考えていることだろう(もちろん、公式発表も何もない状況なので、この内容は完全な憶測である)。しかし、国際文化イベント一般につきまとう問題がここにはある。そもそも異文化遭遇と、そこから期待される発見や認識の本当の意義とはなんなのだろうか。国際性をうたうプログラムは、「自文化」を世界に見せるショーケースであるべきなのか(アウトバウンド)。それともむしろ自国の人びとに海外の芸術を紹介することに主眼があるのか(インバウンド)。もちろん、力点はケースによって異なるだろうし、異文化交流と相互刺激が最終目的であると言ってしまえば、それで済むのかもしれない。しかしそれでも、この交流のあとに、最も基本的な問いが待っている。われわれは本当に「ナショナル」な文化所有権を主張できるものなのだろうか。例えば、何かを見せて、「これがわれわれの文化だ」と言うことにどういう意義があるのだろう。さらに言えば、どのような文化アイデンティティも他者からの認識の上に成り立つ以上、そこでの演目は《国際的に認知可能》でありながら《認知可能な程度に差異がある》という両方の条件を満たす必要がある。両者のバランスをとる国際演劇祭がとろうとするのもそのためだ。たぶんこういった背景があるからこそ、多くの国際芸術祭――そして特に国際演劇祭――は、自文化のデモグラフィ、政治、そして経済に対する主催者側のまなざしをプログラムにおいて定義しようと苦労するのである。(野田 学)
登壇者プロフィール
キム・ユンチョル (Yun-Cheol Kim)
韓国国立劇団芸術監督(2014-)。ブリガム・ヤング大学(アメリカ)で博士号を取得(現代アメリカ演劇)。AICT/IATC前会長(08-14)。会長職期間中、協会のウェブ・ジャーナル Critical Stages を2009年に立ち上げ、現在も編集員として携わっている。20年以上教鞭を執ってきた韓国芸術総合学校演劇院長を2015年に退職、現在は名誉教授である。韓国文化勲章受章(08)、2回「年間ベスト評論家賞」を受賞。著書12冊の内、2冊は演劇評論を集めたものである。
オクタヴィアン・サイウ (Octavian Saiu)
演劇評論家。ブカレスト国立演劇映画大学(演劇学)及びオタゴ大学(ニュージーランド、比較文学論)で博士号を取得。オタゴ大学にて近代文学・博士課程を修了し、演劇・パフォーマンスにまつわる研究指導資格を得る。現在はブカレスト国立演劇映画大学大学院ほか、シビウ大学、ブカレスト大学でも教鞭を執る。ロンドン大学大学院の客員研究員を経て、現在はヨーロッパ・アジアの大学で客員教授として在籍。AICT/IATC副事務総長およびルーマニア支部会長。
藤井慎太郎 (Shintaro Fujii)
早稲田大学文学学術院教授(演劇学、文化政策学)。フランス、ベルギー、カナダなどのフランス語圏諸国・地域、および日本を中心として舞台芸術の美学と制度を研究している。共編著書に『The Dumb Type Reader』(Museum Tusculanum Press・2017)、『演劇学のキーワーズ』(ぺりかん社・05)、監修書に『ポストドラマ時代の創造力 新しい演劇のための12のレッスン』(白水社・13)、共同責任編集に「Théâtre/Public」“no.198:Scènes françaises, scènes japonaises / allers-retours”(09)、共訳書にクリスティアン・ビエ、クリストフ・トリオー著『演劇学の教科書』(国書刊行会・09)、翻訳戯曲にワジディ・ムワワド作『炎 アンサンディ』『岸 リトラル』、ミシェル・ヴィナヴェール作『職さがし』など。
野田 学 (Manabu Noda)
明治大学文学部教授(英文学)。演劇学者、評論家として、新聞、学術誌等での論文・演劇評論多数。AICT日本センター発行の演劇誌/ウェブ・ジャーナル『シアターアーツ』編集部員。AICT/IATCウェブ・ジャーナル Critical Stages 編集員(設立時より)。またコンプリシテ芸術監督である英国の演出家サイモン・マクバーニのワークショップならびに稽古場通訳を務めた経験があり、『エレファント・バニッシュ』(2003)、『春琴』(08)の創作現場に携わった。
市村作知雄 (Sachio Ichimura)
1949 年生まれ。ダンスグループ山海塾の制作を経て、トヨタ・アートマネジメント講座ディレクター、パークタワーホールアートプログラムアドバイザー、㈱シアター・テレビジョン代表取締役を歴任。東京国際舞台芸術フェスティバル事務局長、東京国際芸術祭ディレクターとして国内外の舞台芸術公演のプログラミング、プロデュース、文化施設の運営を手掛けるほか、アートマネジメント、企業と文化を結ぶさまざまなプロジェクト、NPO の調査研究などにも取り組む。