作品について

哲学するヒップホップ。ダンス界の新星、ブラジルから遂に上陸!

ブラジルの首都、リオ・デ・ジャネイロに隣接するニテロイ出身の振付家・ダンサー、ブルーノ・ベルトラオ。彼は若干28歳でありながら、現在世界で最も注目すべき振付家のひとりである。
ブルーノがダンスの世界に足を踏み入れたきっかけは、ストリートダンスであった。仲間を集めてストリートダンスのイベントやコンペティションに参加するうち、ヒップホップをより自由に、思想性のある舞台芸術作品として昇華させるために、ヒップホップの動きのシークエンスを分解し、哲学的な思想を持って再構築する試みを始める。
彼の野心的な試みが最もよく現れた最新作『H3』は、クンステン・フェスティバル・デザール、フェスティバル・ドートンヌ、ベルリンHAU劇場などの世界の名だたる舞台芸術フェスティバルや劇場との共同製作において創作され、2008年の初演以降、世界各地で好評を博している。
エネルギッシュでダイナミックなストリートダンスならではの身体性に、分析的な視点、繊細で緻密な構成、作品全体を貫く緊張感が融合。不要なものを限界までそぎ落としたシンプルな舞台と音楽で構成される本作の焦点は「知覚」と「空間」である。9人の鍛え抜かれたダンサーの身体から繰り返されるムーブメントの連続は、触れそうで触れず、ぶつかりそうでぶつからない。常にギリギリのところで動きが制御される。
ヒップホップと聞いて、グルーヴィーでアップテンポな曲に合わせて次々とテクニックが披露されるダンスを想像し本作を見ると、これが本当にヒップホップなのか疑問に思うかもしれない。
しかし、「ヒップホップは、革新的で表現豊かなボキャブラリーの軌道上に載せられた。今、私たちはヒップホップを転機に立たせなければならないのだ」と語るブルーノ・ベルトラオは、楽しみや興奮を求めるだけのヒップホップに別れを告げ、新機軸を拓こうとしているのだ。

劇評より

ヒップホップする哲学者――ダンス界はずっと彼の登場を待っていた。

(Tagesspiegel紙 2008年5月24日)

ブルーノ・ベルトラオは、ヒップホップを画一化したイメージで捉えることに対して、非常に鋭い批評眼を持つ。

(CORPUS 2008年5月24日)

『H3』は、「ヒップホップを再考する」というブルーノ・ベルトラオの主眼点を強調する作品である。

(De Morgen紙 2008年5月15日)

ブルーノ・ベルトラオは躍動する鼓動を失うことなく、ヒップホップをありきたりのフレームから開放した。

(De Standaard紙 2008年5月14日)