作品について

ドキュメンタリー演劇の最先鋭、リミニ・プロトコル再来!

演劇界の革命児的存在と言えるリミニ・プロトコルが2008年『ムネモパーク』(東京国際芸術祭)、2009年『カール・マルクス:資本論、第一巻』(フェスティバル/トーキョー)に続き、今回、日本では初となる野外パフォーマンスに挑戦する。
ドキュメンタリー演劇の手法で世界中の注目を集めているアーティスト集団、リミニ・プロトコル。「リアリティ対演劇」の関係を常に新しく定義し続けてきた彼らの作品では、主に二つの手法が用いられる。一つは『ムネモパーク』や『資本論』のように、リミニ・プロトコルが「日常のエキスパート」と呼ぶ、作品のテーマと繋がる特別な経験を持った人々を舞台に立たせ、現実そのものを舞台に上げるもの。もう一つは、劇場の外へ出て、社会の様々な現場(裁判所、株主総会、市場、コールセンター等)の日常に演劇性を発見する野外パフォーマンスで、これらは共に爆発的な人気を呼んできた。
『Cargo Tokyo-Yokohama(カーゴ トーキョー・ヨコハマ)』では、彼ら自身が06年に発表した野外パフォーマンスの傑作『Cargo Sofia-X(カーゴ ソフィア・エックス)』のコンセプトをもとに、日本オリジナルの作品が製作される。

『Cargo Sofia-X』

『Cargo Sofia-X』は、06年、バーゼル市(スイス)で製作され、ヨーロッパ各地および中近東の30都市あまりで上演を重ね、大ヒットした。EUの拡大やグローバル化による物流の激化にインスピレーションを受けて製作されたもので、観客は巨大なトラックの荷台を改造した客席に座り、そのまま物流拠点を巡る移動型パフォーマンス。運転手兼パフォーマーには、2名のホンモノのブルガリア人トラック運転手が起用された。ブルガリアのソフィアから別の西欧の町へと安い賃金で長距離を走る彼らの日常生活や仕事に関する実体験を聞きながら、2時間程のツアーでトラックは都市の意外な場所を巡っていく。

『Cargo Tokyo-Yokohama』

『Cargo Sofia-X』のコンセプトに基づき、舞台を日本に置き換えて製作される『Cargo Tokyo-Yokohama』。 島国・日本における都市と物流のリアルとは? グローバル化が日本の物流に与えた影響は?そして、それを支える日本のトラックドライバーの日常は?
アーティストは、2ヶ月間にわたって横浜・東京に滞在し、港湾部や近郊の物流を徹底的にリサーチし、その結果をもとにオリジナル・シナリオを執筆。もちろん出演者も日本住在のホンモノのトラック運転手を選出。歴史や地理、社会統計を実際の素材として盛り込みながら、日本でのみ可能な作品を作り上げる。
「荷物」の目線になった観客たちは、物流のルートをたどりながら、見慣れた横浜や東京の風景とはまったく違う都市のリアリティを発見することになるだろう。