結論からいうと、主人公は迷子にはなりきれなかった。
それなりの紆余曲折はあった。学校を出て年上の大川と不倫、喫茶店で偶然出会った友人の友人の石田とデート、一人暮らしの決断、唐突のプロポーズ、修羅場の分かれ話、そして迷子ぶりをにじみ出させる「わかんない」のセリフの繰り返し。ところが、突然、凡庸なる幕切れ。主人公は、東京タワーに登ってしまう。多分、「面倒くさい」というくらいの理由で。
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<高橋英之氏>
<高橋英之氏>