(こちらの作品は締切後提出でしたので、審査対象外、掲載のみとさせていただいております)
かねてよりの住処が差押えられ、時に美しい声色で嘆きつつも無為のまま退去を強いられる一群れの人々にチェホフ『桜の園』を彷佛とした私の連想は、無理からぬものかと思う。する事のない間延びした時間、無闇に話される言葉、出し抜けの身振り、倦怠感、危機的な状況に見合わない歓楽が、ひたすら舞台の上を流れていった。
寒空の街灯のもと口ずさまれた讃美歌の荘厳に涙を禁じ得なかったと、知人は言った。私はむしろ、この場面を笑った。
<鈴木麻里氏>